消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

161130 開胸の手技

 

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先日,開胸する機会を与えてもらったので,その復習とポイントの整理を行います.
再現できるように細かな点まで記載しておくつもりです.
 
・視野と操作のために,バスタオルで右半身をやや挙上しておきます。
・右手は90度外転させ,第3助手はその頭側に入ります。体勢がしんどいのでつらいポジションです.
・右のケント鉤は,開胸後に頭側方向に挙上するため,通常より頭側に置きます.
・尾側へ腹腔を展開するために,ケント鉤は右下にも追加し合計3本で引きます。
消毒は後腋窩線を越えて行う。消毒後に背側にオイフを敷いて清潔範囲を広く取っておきます.
 
・開腹操作では,剣状突起の右縁をできるだけ頭側へ切り上げると、第6,第7肋骨の付着部の筋肉を外すことができるため、肋骨が開きやすくなる。
開腹のラインを第9肋間につなげておきます。この意識がないとうまくつながらず,開腹ラインの途中から頭側へ切り込む形になってしまいます.閉胸時も合わせるべき層がわかりづらくなります.
・第9、10肋骨の間の肋軟骨を電気メスで切開し、肋間動静脈の走行するラインで結紮切離します。
 
第10肋骨を左手で触診しながら,その上縁で肋間筋を切開します。電気メスでもリガシュアでもよいのですが,よく出血する部位であるので注意が必要ですし,その都度きっちり止めます。
・開胸の目標は左腕がIVC背側までまっすぐに入ることです.そこまで入ると,IVCからあるいは肝静脈根部からの出血を背側から圧迫して止血が可能です.
その目安として肋間筋の切開は,およそ中腋窩線までとなりますが、前〜後腋窩線になることもあります。
 
背側は横隔膜を切開しますが,これも出血しやすいので注意が必要です.頭側へ向かうと横隔神経の枝を損傷するので,外側に回り込むようにします.