消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

2015-01-01から1年間の記事一覧

151124 抗がん剤による吐き気の予防

今日は抗がん剤についてです. 抗癌剤の副作用として,まず思い浮かべることに 『吐き気』や,『実際に吐いてとてもしんどそう』 というのがあるかと思います. 実際によくテレビに出てくるシーンでは, 抗がん剤=吐いて食べられない とワンセットになって…

151118 尾状葉部分切除(下大静脈を圧排する2cm大の肝細胞癌)

尾状葉(S1)はあまり目にする機会が多くなく、 肝静脈の裏側というわかりにくい場所のため、 その解剖はなかなかとっつきにくいものです。 尾状葉切除前 切除後 引用:肝臓外科の要点と盲点 20. 背方からのS1切除 しかし,短肝静脈やアランチウス管はよく扱い…

151115 読書で健康管理の改善

今日は自分の体の話です. 以前に下の記事に書いたのですが, 35歳を超えて当直などをすると疲れやすく感じるようになりました. 150908 当直と疲れについて 時間の使い方を見直して1ヶ月での評価 そこで現在は体重を落とそうとしているところです. 思った…

151113 下大静脈腫瘍栓 つづき

前回に引き続き,下大静脈腫瘍栓に関する内容です. 腎細胞癌の下大静脈腫瘍栓に関する特徴ついてまとめます. ・腎細胞癌は静脈腫瘍栓を形成しやすい 腎静脈に30〜40% 下大静脈に達するのが4〜10% 右心房に達するのが1%と言われる ・静脈腫瘍栓を伴う腎細胞…

151111 下大静脈腫瘍栓の摘出

下大静脈腫瘍栓とは,腫瘍が静脈内に進展していき, それが延長していき下大静脈にまで達したものです. 当科では腎細胞癌の下大静脈腫瘍栓に対して、年間に数例の手術症例があります。 決して珍しい手術ではありませんが, われわれ消化器外科,心臓血管外…

150923 ラグビー日本代表の肉体と精神に関する興味

今日はラグビー日本代表のワールドカップの試合を見て、いろんなことに興味がわいてきましたので、それらに関する日記になります。 ラグビー日本代表は、スコットランドに負けて残念だったが、完全に対等な試合運びができていた。初めて試合を見たが、日本の…

159017 統計熱が冷めないうちに

今日も寸暇を惜しんで、論文執筆を進めています。先日、苦労して書いた一例報告の論文が、英文誌に掲載されることが決まりました。小さな仕事かもしれませんが、ここまで随分と時間がかかり、また若干諦めかけていたところもあるので、とても嬉しいです。多…

150913 統計学を教える場を作る 〜自分なりの渦の巻き方〜

医学の分野において,学会で発表するとき、あるいは論文を書くときには、統計学の知識が必要になります。 例えばある2つのグループがあり、その成績を比較したい場合にどうするかというと,ただ平均値を出して,例えばそれをグラフにして比較するだけでは不…

150908 当直と疲れについて 時間の使い方を見直して1ヶ月での評価

安田

150907 肝外側区域切除 左肝静脈の縫合閉鎖

今日は肝切除のうち、外側区域切除についてです。 肝外側区域切除は左葉の外側区域、クイノーの区域分類でいう、S2、3を切除する術式で、具体的には門脈臍部に沿って切除し、左肝静脈は根部近くで切離します。系統的肝切除の中では,容易な術式とされており…

150903 学会発表の抄録を書くときに注意すること

最近あまり時間が取れず,このブログへの書き込みが滞ってしまっていますが,その理由は何と言っても,学会発表の抄録(発表する内容の要約です.この出来によって当落が決まりますし,より上級のセッションに通るかどうかも決まります)の締め切りが目前に…

150901 〆切効果

来週に学会発表の演題募集が締め切りになります.日常行っている臨床の成果や結果,研究内容などについて,学会発表や論文に掲載することは,大学で働いているわれわれの使命のひとつであり,存在意義のひとつでもあります. そうとはわかっているのですが,…

150831 転移性肝癌の石灰化

先日,腎機能障害が高度なため,造影剤が使えない転移性肝癌の症例を経験しました. 普段から造影CT,EOB-MRIに完全に慣れているので,単純CTと単純MRIの読影には不慣れです.しかし高齢化がどんどん進んでいる現状では,腎機能障害の方も増えていくでしょう…

150826 高齢者の患者さんに対する手術をどの程度勧めるか

消化器外科において,高齢者(75歳以上を指すことが多いです)に対する手術を積極的に行うかどうか,という議論が盛んになされています. 胃癌,大腸癌から膵癌,そして私の専門の肝臓癌についても,同様の議論があります. 実際に手術を受けられた患者さん…

150823 親指シフト

今日は以前から興味のあった,「親指シフト」をついに始めました. これは,キーボードでの文字入力のうち,ローマ字でもない,かな文字入力でもない方法です. これを知ったのは,ずいぶんと前になりますが,勝間和代さんの著書であります, 「無理なく続け…

150820 バイポーラの使い方

本日の30分の第2領域の活動 ・夏休みの旅行のレシート・領収書のまとめ ・生命保険の契約書類変更 たまっていたものの処理が,着々と進んでいます.スッキリした気分です. 非常勤医師として働いているの勤務先の病院で,手術手伝いをしているのですが,今日…

150819 結紮の上達のために環境を整える

最近になってようやく,『結紮』に対する不安やプレッシャーがなくなってきたように思います. 結紮の手技は外科医にとって,かなり基本的なものであり,それこそ1年目から指導され,ずっと付きまとうものです.そして個人差も出てきます. 一般の消化器外科…

150818 第2領域のための30分を確保する

緊急性はないけれども,重要なこと,いわゆる『第2領域』の行動を,最も優先させるべきであることは,いろんな方が口をそろえて言われていることです. 実際に自分も『第2領域』の行動,例えばこのブログを書くことや英語論文を読むこと,結紮は糸を肌身離さ…

150817 若手の先生への指導

手術前に行われるカンファレンスでは、教授を始め医局員の前で手術症例をプレゼンテーションするのですが、原則として若手の先生の仕事です。 自分たちだけではできない部分もありますので、我々指導医がしっかりと教えるのですが、その若手の先生によってず…

150816 日常の積み重ねが極限状態で活かされる

先日,術後の患者さんの容態が急変し,一刻を争うような緊急事態となりました. 結果的には,緊急手術で救命することができたのですが,対応を一歩間違えれば,命を落としていたのではないかと思います. その詳細はこの場では触れませんが,最終的に手術を…

150814 肝部分切除の手技 左手の使い方 〜視野の展開から出血のコントロールまで〜

肝切除において,左手は決定的に重要な役割を持っています. 消化器外科手術の全般において,左手は重要な事に違いはありません.一般的に左手は鑷子で切離したい組織の近くを持ち,適切な展開・カウンタートラクションをかけて,的確で安全な切離の微調整を…

150813 肝部分切除の続き 術中エコーの使い方

昨日の肝部分切除の続きです. 昨日は①切離マージンは腫瘍の深さで変える,②ペアン鉗子のさばき方を知る,③腫瘍や肝実質の牽引の注意点,について,要点を書きました. 次に術中の肝エコーについても,使い方があります. 昨日の場合は切離方向が浅くなって…

150812 肝部分切除の手技のポイント・コツ 後輩の指導の反省点

今日は後輩の肝部分切除に助手として入りました.彼はまだ消化器外科の中での専門分野を決めておらず,今はわれわれ肝胆膵グループを研修のように回っています.今回のような肝部分切除は,他の病院で数例したことがあるとのことでした. 今日の手術はS4の小…

150810 肝亜区域切除 総論

肝亜区域切除とは,系統的肝切除のひとつであり,肝細胞癌に対して行う手術方法です. そもそも肝細胞癌に対する系統的切除とは,肝細胞癌が門脈血流にそって進展・転移する,という事実に基づくものです.そうであれば,その腫瘍に関係する門脈の範囲をでき…

150808 振り返りの習慣 〜吾日に我が身を三省す〜

毎日自分のことを振り返り,小さな改善を積み重ねていきたいと思っています.ブログを再開したのも,それが目的です. そのように意識するだけで,日々の具体的な体験,経験から,何が教訓として得られるのか,学びとなったのか,考える癖がついてきました.…

150806 オリジナルの味を追求するということ 〜北海道のラーメンに思う〜

今日は家族で北海道旅行に来ました.千歳空港を出て近くのラーメン屋さんに早速入り,それがとても美味しかったです! 食べているうちに,いろいろと考えることがあったので,その内容を書きたいと思います. ラーメン屋さんを始め,飲食店がその店オリジナ…

Vol.4 150805 学びの段階に応じて,見えるものが変化する

先日,腹腔鏡下肝外側区域切除を, 初めて最後までさせてもらうことができました. 完投したのが初めてでしたので, 達成感もあり,それは嬉しかったわけですが, そこにはある副産物があることに,気が付きました. それは,「視点」が変わったこと. それ…

Vol.3 150804 当直と疲れについて 昨日の続き

昨日の内容の続きになります. 具体的に何に取り組むか,考えてみました. 仮説は,「当直の疲れは,年齢そのもののせいではなく, 時間の使い方を変えたり,体力をつけたりすることで, 軽くすることができる」です. まずやるべきことは,「時間の使い方」…

Vol.2 150803 体力は本当に低下しているのか? 35歳は目安になるのか.

30代半ばを過ぎましたが、当直で病院に泊まると なかなか疲れが取れなくなってきたように感じます。 忙しくない当直、言わば電話が鳴らず、夜に起こされなかったとしても、 疲れてしまいます。 ここでお決まりの会話がなされるわけですが、 「30歳を過ぎると…

No.1 150802 ブログの再開.「教科書の編纂」と「思考の言語化」を目指して

およそ2年のブランクが空きましたが, ブログの記事を再開することにしました. 思い立ったきっかけは, 平成進化論で鮒谷周史さんが言っておられる, 「自分の教科書の編纂」と,「思考の言語化」のためです. 特に,思考の言語化によって,自分が考えてい…