消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

胆嚢癌 術式選択と深達度診断 180608

 

術式選択

  • 深達度がM, MPであれば胆嚢内に限局するため,胆嚢摘出でよい.
  • 肝床部のSS腫瘍であれば,切除マージンを確保するために,肝床切除を追加する.実際にはMPとSSの判断がむずかしいこともあり,MPの診断であっても肝床切除を行うことがある.
  • しかしコンセンサスの得られた術式はなく,SS浸潤であれば肝内転移の制御目的にS4a+S5切除を行うこともある.これによって予後を改善するといったエビデンスはない.
  • SEで肝床部に浸潤があれば,S4a+S5切除あるいは拡大右葉切除が選択される.
 
リンパ節郭清
  • Mであればリンパ節転移はない.
  • MPではリンパ節転移は少なく,郭清を省略することも多いが施設の判断による.
  • SSであればリンパ節転移が40~60%,SEでは75%程度見られることから,D2郭清(No.8, 12, 13)が行われることが多い.
  • こちらに関しても,郭清により予後が改善するエビデンスはないのが現状.
  • 壁深達度の診断が重要だが、診断が難しい。
 
深達度と術式,リンパ節郭清の表

 
 
診断のポイント
  • 胆嚢の腫瘍,炎症性病変,コレステロールポリープはいずれも造影される
  • 腫瘍性病変は単純CTで描出されるのが特徴
  • 胆管の拡張を伴わない非拡張型の膵管胆道合流異常に胆嚢癌の発生が多い
  • 20mm以下のⅠp病変はM, MP癌が多くIs型ではSS以深と考える. 
  • 20mmをこえると明らかな漿膜外浸潤がなければ,SSと診断する.
  • 平坦型胆のう癌の診断は困難である.CT・MRI所見としては,不均一な壁肥厚,粘膜面の不整,壁構造の乱れなどであるが, 多くの場合は胆のう壁の層構造の描出は困難である。
  • 最も診断能の高いのはEUSであるが,それでも診断は難しく,総合的に判断せざるを得ない.