消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

160223 S8亜区域切除 染色法

f:id:satoshi22:20160223140247p:plain

腹腔鏡の鍛錬として,(できるだけ)毎日ドライラボで縫合,結紮の練習をするようにしています.

時間はごく短いですが,こういうものは少しずつでも続けることが大切です.

ここに記録することで,毎日続けられるモチベーションにしようと考えました.

『習慣化』はキーワードのひとつとして,常に意識していますので,こういう形でも始めてみます.

 

 

今日もS8亜区域切除の続きです。

S8門脈枝を染色するときに、右肝動脈をクランプし、門脈血流のみにしておくと、染色境界がよりはっきりと見えます。
うちでは普段、この術式のときには右肝動脈の確保はしていません。
 
胆嚢を摘出するのであれば、胆嚢動脈を処理した続きで右肝動脈を確保することは、流れの中で行えます。
 
この場合,胆嚢を摘出するかどうかは判断が分かれるところです.
当科では、今後、再肝切除の可能性がある症例に対しては、術後の癒着を軽減する目的で、胆嚢は温存することを原則にしています。
 
一方で再発しても再肝切除できなさそうな症例では、TACEや肝動注に備えて胆嚢を摘出しています。
 
今回の症例では、まだ年齢も比較的若く、肝機能も保たれていますので、再発しても十分再肝切除が可能と考え、胆嚢は温存する方針です。
 
インジゴカルミンの染色法にて、染まりが悪い場合は、固有肝動脈をクランプするのもいいと思います。
 
肝十二指腸間膜を触診して、動脈の拍動を確認して固有肝動脈の走行を確認し、その上で間膜を切開。
周囲の組織を持ちながら、電気メスやメッツェンバウム剪刀で鈍的に剥離します。動脈は直接把持すると、内膜損傷から血栓形成のリスクになりますので、持たないように気を付けます。
 
右側、左側から進め、右胃動脈を傷つけないように注意し、リンパ管は結紮しつつ、全集性に確保できれば、血管テープを通し,タマイクリップ(大)でクランプします。
 
 
続いて,エコーで穿刺するS8門脈の根部を描出します.
このときはできるだけ長軸方向を出すと,穿刺しやすくなります.
 
穿刺針は22ゲージのカテラン針に延長チューブを接続し,三方活栓をつけてそれぞれ生食とインジゴカルミンをつなぎます.

f:id:satoshi22:20160223143720p:plainだいたいこんな感じです.

 

まずは三方活栓を生食の方向につなぎ,門脈に穿刺すると同時に吸引して血液の逆流を確認します.
門脈に穿刺できれば,三方活栓をインジゴカルミンの方にに回し,5ml注入します.
 
この時,エコーで注入している様子が見えますので,逆流しないように注意しながらゆっくりと注入します.
おおよそ10秒程度で注入できますが,門脈が細い場合やS5門脈が近い場合,また穿刺方向が逆流方向の場合などは,さらにゆっくり注入します.
 
注入中にもすぐに染まってきますので,すぐに電気メスで肝表面にマーキングします.
境界がわかりにくいこともありますが,術前のVINCENT画像なども参考にして,あらかじめイメージを持っておくことも大切なポイントの一つだと思います.
 
複数の門脈穿刺が必要なこともあり,それぞれ染色して最終的な切除ラインを決定します.
 
S8切除では中肝静脈,右肝静脈を根部に向けて露出するラインになりますので,染色したラインとは別に,静脈の走行もエコーで確認しておき,最終ラインとします.
 
エコー操作はなかなか奥が深く,まだまだきちんと描出しきれません.
術中エコーに関しても,あらためてまとめたいと思います.