消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

オプジーボの副作用 一般的な抗がん剤との違い

目次 一般的な抗癌剤の副作用 オプジーボの副作用が起こる機序 オプジーボの副作用の種類 一般的な抗癌剤の副作用 前述したように、一般的な抗癌剤の副作用は、活発に細胞分裂する組織が傷害されることによって起こることが多いです satoshi22.hatenablog.co…

進行胃がんの抗癌剤治療 オプジーボ(免疫チェックポイント阻害薬)について

進行胃がんの抗癌剤治療には、現在保険適応となっている薬剤が以下のように比較的多くあります。 どの薬剤を選択するべきか、という方針は胃癌治療のガイドラインがあるので、基本的にそれに沿って行います。 ※ ただし、ガイドラインにも明記してあるのです…

新型コロナウイルス クルーズ船内の現状

https://ceron.jp/url/www.youtube.com/watch?v=W3X3RSmf7dsダイヤモンド・プリンセスはCOVID-19製造機。なぜ船に入って一日で追い出されたのか。(kentaro iwata) - YouTube感染症の第一人者である岩田先生の緊急発信です。 この方の著書はいくつも読んで…

180821 アウトプット大全 読後の感想

精神科医の樺沢紫苑先生の著書である 「アウトプット大全」という本を読みました とてもためになることが多く,即実践可能ですので, とてもお薦めです. これまでの自分の学習が,「インプット」中心であったことがよくわかり, 「アウトプット」することこ…

胆嚢癌 術式選択と深達度診断 180608

術式選択 深達度がM, MPであれば胆嚢内に限局するため,胆嚢摘出でよい. 肝床部のSS腫瘍であれば,切除マージンを確保するために,肝床切除を追加する.実際にはMPとSSの判断がむずかしいこともあり,MPの診断であっても肝床切除を行うことがある. しかし…

ラパロ大腸切除の勉強会 振り返り 180519

先日,ラパロ大腸切除の勉強会がありました. そこで気づいたポイントを,簡単にアウトプットしておきます. ・ビデオ審査をされる先生は,まず全体を通して見た印象が大事であって, 『この先生は後輩を育てられるだろうか?』という視点で見ているそうです…

180517 胃癌の術後補助化学療法 〜胃癌治療ガイドライン2018年改定より〜

胃癌の5年生存率を示します. 全症例:74.5% ステージ1:98.1% ステージ2:66.4% ステージ3:47.3% ステージ4:7.3% 当然ですが,癌のステージが上がるにつれて,術後の再発が増え生存率が下がります. そこで再発率の高い患者には,再発予防のための抗癌剤…

180503 食道胃接合部癌とは?

『食道胃接合部癌』とは,食道から胃の移行部分に生じた癌のことを指します. 縦隔内の臓器である食道に発生した『食道癌』と, 腹腔内にできた『胃癌』とでは,手術方法をはじめとした治療方法が大きく異なります. そこで以前から,『食道胃接合部癌』を『…

180502 折り鶴,ようやく20分の第一目標達成

先日,38日目に19分30秒で, 何とか4月中の目標であった20分を切ることができました. もっと早く到達したかったのですが(汗) 少しずつ記録を更新し続けました. 正直なところ,思うように行かずにもどかしい日々でしたが, 一方で着実に一歩ずつ前に進む…

180407 腹腔鏡トレーニングの経過です

腹腔鏡のトレーニングとして先日から始めた, 折り鶴チャレンジの経過表です. 25羽目で25分29秒. なかなか思うようにいかず,日々もどかしいですが, 少しずつ,確実に進んでいます. 最近気づいたポイントは, ・力みすぎると細かな作業がうまくできなく…

180406 経肛門的腫瘍切除

今日は『経肛門的腫瘍切除術』についての内容です. 一般的に直腸の腫瘍に対する手術としては,多くは低位前方切除や腹会陰式直腸切断術(マイルス手術)が行われ,また最近では肛門を温存するISRも行われるようになってきています. 一方で腺腫や早期癌(深…

180324 ラパロトレーニング 『折り鶴チャレンジ』

今日はちょっと変わった腹腔鏡手術のトレーニングを紹介します. 先日もブログに書いたのですが、私の今年の目標のひとつは、 内視鏡外科の技術認定を取得することです。 そのために、改めて解剖の知識や手技を、細かいところまで勉強し直しています。 手術…

180107 神・時間術

今日は先日本屋さんで手にした本を紹介します.精神科医の樺沢さんという方が書かれた『神・時間術』という本です. 神・時間術 作者: 樺沢紫苑 出版社/メーカー: 大和書房 発売日: 2017/06/16 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 本の表紙と,…

180105 本年の目標 『内視鏡外科の技術認定取得』

新年明けましておめでとうございます. 今年もこのブログで,消化器外科医として学んだことや考えたことを, アウトプットしたいと思います. 今年は,『内視鏡外科学会の技術認定取得』を目標にしています. ですので,腹腔鏡手術の内容を,これまで以上に…

171212 消化管穿孔など,腹膜炎に伴う敗血症性ショックや全身管理

われわれ消化器外科は,日常的に数多くの緊急手術を行っています. その中には急性虫垂炎や急性胆嚢炎,鼠径ヘルニアの嵌頓など,術後の経過は比較的落ち着いているものも多いのですが,腹膜炎によって全身状態が非常に悪くなってしまう方もおられます. 例…

171209 内視鏡外科学会 教育集会 腹腔鏡大腸手術

先日の内視鏡外科学会の教育集会で、内視鏡技術認定試験のための講演がありました。 技術認定制度については、賛否両論ありますが、取得を目指す過程で得られる学びというものは、やはり計り知れないものがあります。 こういうきっかけがないと、徹底できな…

171126  下腸間膜動脈(IMA)から左結腸動脈を剥離する方法

『魅せ技』という手術の動画サイトがあります. そこには各分野のエキスパートの先生方が,代表的な手術の動画を解説付きで載せられています. www.misewaza.jp 解剖学や手術の手順など,手術書や解剖学の教科書、アトラスなどで手術の勉強をすることも多い…

171121 習慣化の大切なポイント『一度に1つだけ』

前回は習慣化しようとしたときに、 どんな風に挫折してしまうのか、 それぞれの時期を乗り越えるためにはどうすればよいか、ということをまとめました。 今回は別の視点から、習慣化するときに押さえるべきpointをお伝えしたいと思います。 それはズバリ、 …

171120 習慣化の挫折対策 その②

前回は、習慣化する際に挫折してしまう時期とその理由を3つに分けて、①反発期、②不安定期、③倦怠期、とに分かれるという話を、『続ける習慣』を引用してご紹介しました。 「続ける」習慣 作者: 古川武士 出版社/メーカー: 日本実業出版社 発売日: 2010/11/11…

171107 習慣化の技術 自分が取り入れたこと

ひとりの医師として、外科医として、 自分が求める『理想の姿』というのがあります。 それは家庭では夫、あるいは父親として、 こうありたい,というのが同じくあります. それらはただ漫然と過ごしていては手に入らなくて、 日々の行動の積み重ねによって,…

171110 十二指腸のリンパ流

十二指腸に発生したNETの患者さんがおられます. 腫瘍径が小さく,深達度も深くないことから, 十分に患者さんと相談した上で, 幽門側胃切除を行うことにしました. この判断は難しく,さまざまな選択肢がある状況です. ガイドライン上も明確な推奨がない…

171108 胃癌の補助化学療法

最近しばらくの間,肝胆膵の領域の診療に特化して携わっていたので,胃癌の治療から遠ざかっていました. 今の病院では胃癌も大腸癌も数多く診ることになりますので,現在の標準治療を再確認する必要があります. 今は先日,胃癌の手術をした患者さんの病理…

171104 抗真菌薬の使い方 外科領域フローチャート

いま主治医でみている重症患者さんの,発熱が持続しています. 腹腔内膿瘍がありましたので,経皮的にドレナージしてもらいましたが,それでも持続するため,他の原因も併発していると考えられます. ひとつはカテーテル感染です. 内頸静脈からのCVカテーテ…

171029 直接ビリルビンの上昇

いまICUに,汎発性腹膜炎で手術をした重症患者さんがいます. もうすぐ1週間になりますが,敗血症性ショックなどもあり,まだ人工呼吸管理,CHDF(持続血液透析)が必要な状態です. 数日前から徐々にビリルビンが上昇し,直接ビリルビンが優位で,トランス…

171028 新しい病院に移りました

ずいぶん久しぶりの投稿になりました. 最近,異動で中規模の急性期病院に移ることになりました. これまではほぼ肝胆膵領域のみに携わっていたのですが, 新しい病院では上部消化管から下部消化管の悪性腫瘍ならびに急性腹症まで, すべての手術や診療を行…

170106 4時間半睡眠。再び。

以前のプレジデントの特集で、4時間半睡眠の特集をみかけました。 以前にもこの方法は学んだことがあり、内容はよく知っています。 平日は4時間半睡眠で過ごし、土曜日には6時間、日曜日に7時間の睡眠で不足分を調節する、というものです。 日中に眠気が…

170106 腸球菌(Enterococcus)感染症 E. faecalis(フェカーリス)とE. faecium(フェシウム)

細菌感染に対して治療を要する場合に,菌種によって治療方法が異なることがあります. 腸球菌の臨床ではほとんどがE. faecalis(フェカーリス)とE. faecium(フェシウム)ですが, E. faecalisはペニシリン系,セフェム系が効くのに対して, E. faeciumは抗…

161130 開胸の手技

先日,開胸する機会を与えてもらったので,その復習とポイントの整理を行います. 再現できるように細かな点まで記載しておくつもりです. ・視野と操作のために,バスタオルで右半身をやや挙上しておきます。 ・右手は90度外転させ,第3助手はその頭側に入…

160629 肝内胆管癌の画像所見(胆管浸潤型)

以前にもこのブログで書きましたが,肝内胆管癌の診断は比較的難しく,とくに胆管浸潤型のものは腫瘤が明瞭に描出されないので,そもそもそこに腫瘍があるのかどうかも指摘するのが難しいことがあります. satoshi22.hatenablog.com 腫瘍は同定できずに肝内…

160621 脚下照顧

最近、学会発表や学会の抄録、論文の投稿などが続き、そのたびに上司に見てもらっていました。まだまだ自分一人の力では、十分なレベルに到達しないので、このように指導してもらう必要があるのですが、こういうことが最近続いたせいか、何かしら評価を避け…