160219 肝S8亜区域切除の予習
今度,S8の肝細胞癌に対して亜区域切除を行いますので,その予習としてポイントをまとめたいと思います.
疾患は肝細胞癌で,肝臓の右葉,前区域のS8に存在する腫瘍です.
S8グリソンの根部に近い部分で接しているので,亜区域切除がよい適応になります.
この手術のポイントは概ね以下のようになります.
- S8グリソンの穿刺による切除範囲の同定
- 処理すべきS8グリソン根部への到達
- 右肝静脈および中肝静脈の露出
- 充分な肝授動
それぞれについて,要点を挙げていきます.
①S8グリソンの穿刺:エコーによってS8の門脈枝をうまく描出し,S5グリソンの最終枝が別れたところで穿刺し,インジゴカルミンを注入,染色します.このエコーでの門脈の描出が,習熟すべき手技のひとつです.
それができれば,染色範囲をすばやく電気メスでマーキングします.
②S8グリソン根部への到達:到達すべきS8根部は比較的深い位置にあります.熟練した肝臓外科医であれば,立体的な肝臓の位置関係を正確にイメージできているので,そこへの到達は特に苦労されません.その領域に達していない自分としては,まだまだ難しい手技になります.浅くなると腫瘍の露出,損傷のリスクがありますし,深くなるとS5グリソンを切ってしまい,余分な肝実質を犠牲にするリスクが有ります.
事前からの十分な立体解剖のイメージと,術中エコーを駆使して到達すべきポイントを見失わないことが大切です.特に肝実質に切り込む方向,ラインとどの方向からエコーを当てて確認するか,充分に考えておきます.
③S8領域は右肝静脈の腹側,中肝静脈の左側という境界ラインがあります.解剖学的により適切な範囲のS8切除を行うには,この両肝静脈を露出させるラインが望ましいとされており,手技の高い完成度を目指すためにもこのポイントは押さえておきたいところです.両血管の根部に近づくところは,血管が太く,小さな損傷が大出血につながる怖い領域です.出血は必ず起こるものですので,左手の圧迫で出血の勢いを抑えつつ,血管の縫合止血など冷静な対応で最小限にとどめます.
④肝授動:とくに出血量を最小限にするためには,左手で肝実質を背側から腹側に向けて適度に圧迫,挙上する必要があります.そのためにも十分に肝を授動し,左手の中に収めることが肝腎です.
これらを意識しつつ,手術前にCTやビンセントの3D画像を頭に叩き込んでおき,万全の準備をします.
追加することがあれば追記することにします.
手術での反省点や学んだことを,フィードバックしたいと思います.