消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

150813 肝部分切除の続き 術中エコーの使い方

昨日の肝部分切除の続きです.

 

昨日は①切離マージンは腫瘍の深さで変える,②ペアン鉗子のさばき方を知る,③腫瘍や肝実質の牽引の注意点,について,要点を書きました.

 

次に術中の肝エコーについても,使い方があります.

昨日の場合は切離方向が浅くなってしまいましたが,途中で進行方向を確認することが重要です.その時にエコーを利用します.

一つ目の方法は,離断面にクーパーを当てておき,その長軸方向にプローブを当てるやり方です.じっとしていると意外とわかりにくいので,クーパーを動かしてもらうと,高エコーなクーパーと腫瘍の位置関係や,離断している方向もわかります.

これで最も深い部分を超えているなら,あとは水平に離断し,腫瘍を超えて浅くしていけばいいですし,腫瘍に向かっているようなら,垂直方向へ進路を変更することになります.

 

もう一つの方法は,離断面にガーゼを広げておき,同様に表面からプローブを当てます.この方法でもわかりやすいと思います.

どちらの方法でもいいのですが,クーパーをサッと入れるのが早いもののなんとなくわかりにくければ,ガーゼでもやってみて確認する,のようなことが多いでしょうか.

いずれにせよ,現状の位置関係と方向がわかればなんでもいいので,絶えず意識することを忘れないことです.

 

上手な先生方を見ていると,立体イメージがより明瞭かつ正確なことは当然ですが,それぞれの手技を自在に操られるので,全体像や意識するべきポイントに,集中することができているように思います.

ですので,まずは各手技を練習,イメージで身に付けること,目標は「空気を吸って吐くように」自然にできることです.

これは助手の役割と,結紮の習得度合いの関係にも言えることですが,詳しいことはまた後日にします.

 

本日の教訓

・肝離断は方向性が大切.

・そこに集中するためには,ひとつひとつにの手技に習熟しておく必要がある.

・手技を身につけることで初めて,次のステップに進める.