消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

160222 開胸,閉胸の操作と解剖

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右葉の肝切除の際に肝臓の充分な視野を確保するため,右開胸をすることがあります.

当施設では通常あまり開胸は行っていませんが,必要なときのための自分の予習としてまとめました.

 

肋骨は背側では第12胸椎までありますが,腹側の肋軟骨に結合するのは第10肋骨までで,体表から触れるもっとも尾側の遊離肋骨が、第10肋骨ということになります。

肝切除の際は第10肋骨のすぐ上の,第9肋間を切開することになりますので,J字切開、あるいは逆L字切開の際の横切開創は、第9肋間に向けて皮切線を描きます。

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肋軟骨をリューエル鉗子で切除し,同部位で骨膜、胸膜を結紮切離します。

肋間動静脈は肋骨下縁にあるので、肋骨上縁を露出するように、肋間筋を切離していきます.

 

胸腔側からの胸膜,肋間筋の切離は,充分背側まで行うことで,牽引に伴う肋間筋の損傷を防止することができます.

目安として後腋窩線と椎骨右縁の中点まで,とも言われます.

 

閉胸の際は,第9肋骨,第10肋骨ともに下縁の肋間動静脈を損傷しないように注意し,それぞれの肋骨の外側を通して3〜4針かけます.

 

最後に充分に肺を加圧してもらい,無気肺を防ぎます.

 

また必要であれば、第7肋間あたりから胸腔ドレーンを挿入しますが、必ず必要というわけではありません。