150810 肝亜区域切除 総論
肝亜区域切除とは,系統的肝切除のひとつであり,肝細胞癌に対して行う手術方法です.
そもそも肝細胞癌に対する系統的切除とは,肝細胞癌が門脈血流にそって進展・転移する,という事実に基づくものです.そうであれば,その腫瘍に関係する門脈の範囲をできるだけ切除したほうが,細胞レベルでも残存する腫瘍がより少なくなる,と考えられて,門脈の支配領域を切除するようになった,という経緯があります.
門脈の支配領域を区別すると,まず門脈の最初の分岐点(第1分枝)は,左右の太い枝になります.それぞれ門脈の右枝と左枝ですが,その領域の切除が,それぞれ肝右葉切除,左葉切除となります.次の第2分枝は,「区域枝」になり,右葉で言うと,前区域,後区域となり,左葉は内側区域と外側区域,という分け方になります.
この領域を切除する方法を,区域切除,と言います.
系統的肝切除では,現在のところもうひとつ次の分枝まで分けています.第3分枝はCouinaud(クイノー)分類に基づいた番号に分かれ,S1からS8までに分かれます.この領域レベルでの肝切除が,冒頭に示しました「亜区域切除」になります.
さらにその細い分枝まで分けるべきかどうか,学会などでは議論が盛んになされている分野ですが,実際の臨床では,そもそも系統切除が必要かどうか,はっきりした結論が出ていないのが現状です.
現在は臨床試験が行われている最中であり,系統切除 VS. 非系統切除(部分切除)の結果が待たれるところです.これまでの単施設の報告では,わずかに系統切除が良い長期成績(生存率が高い)というものがある一方で,どちらも差がないという報告もあります.より大きな規模である現在の臨床試験の結果がどうなるか,これにより今後の術式が大きく変わってくるかもしれません.
亜区域切除の具体的な手術方法についても,随時記録していきます.