消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

Vol.4 150805 学びの段階に応じて,見えるものが変化する

先日,腹腔鏡下肝外側区域切除を,

初めて最後までさせてもらうことができました.

 

完投したのが初めてでしたので,

達成感もあり,それは嬉しかったわけですが,

そこにはある副産物があることに,気が付きました.

 

それは,「視点」が変わったこと.

それまでは,どちらかと言うと「助手」の立場で見ていたものが,

「術者」の目線から見るようになるわけです.

 

別の言い方をすれば,

ある意味,「傍観者」から「当事者」に変わるのにも,

似たような感覚です.

 

視点が変わると,それは色んなことが変わります.

まず観察する対象が変わります.

他の人の手術をみるのでも,

これまではどちらかと言うと,全体をぼんやりと見ていたのですが,

今では,大きな流れの中で次の一手をどうするのか,を考えます.

 

さらには,次はどこをどのように攻めるか,

どの器具を使って,どこをどう持って,手の角度はどうするのか,

など,どんどん観察の対象が,細かく,具体的になってくるのです.

 

本やDVDで手術のことを勉強するときでも,同じことが言えます.

今までとは目をつけるところが変わりました.

 

総論から各論に突入したとも言えるでしょうか.

そして,今まで見落としていたものが,眼に入ってくることがしばしばあります.

次のステージに入ることができたと思って,

よりいっそう良い手術ができるように,学びを続けていきます.

 

ここまで考えて,ふと気づいたこともあります.

今回は,手術をさせてもらえたことによって,

新たな境地へと進めたわけですが,非常に大きな一歩になりました.

 

しかし実際に変わったのは,「視点」であり,

それはすなわち「考え方」なのです.

手術をさせてもらったことは,「きっかけ」に過ぎず,

言ってしまえば,そのきっかけがなくとも,変わることはできたのかもしれません.

 

その方法がわかれば,きっかけを待つ必要がなくなるのではないでしょうか?

どこかにヒントが有るはずです.

今回の変化をきっかけに,その点についても,これから考えていきたいです.