消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

130908 昨日の研究会 〜大腸癌化学療法について〜

昨日参加した『これからの大腸癌化学療法』の覚え書きです

レゴラフェニブ(スチバーガ)の副作用として,Hand-Foot-Syndromeに注意

  • 特に体重のかかる足底部に強く出る
  • まず痛みが先行し,翌日くらいから皮膚の発赤・水疱・表皮剥離が出現する
  • NSAIDsが比較的効く
  • 刺激を避ける事が重要.物理刺激や熱,締め付けなど
  • 早めの休薬(迷ったら休薬)と減量によって,治療継続を可能にすることが重要
  • ケラチナミンクリーム(尿素含有)による保湿
  • 刺激が強いときはヒルドイドで代用
  • 症状が出現時はマイザー軟膏(very strong)やデルモベート(strongest)

「コメント」

患者への注意喚起と患者の十分な理解が治療継続に大きく影響することになりそうです.処方可能な患者をよく考える必要がある薬剤です.

 

KRASのみならずNRASの突然変異も重要

  • KRASの突然変異群(Exon2のcodon12, 13)は大腸癌の約40%存在し,EGFRから常に増殖刺激が出ているため,EGFR阻害薬が無効
  • KRASの上記以外の突然変異とNRASの突然変異も合わせて10%強あり,これらも同様にEGFR阻害薬が無効であるのみならず,むしろ予後を悪化させることがわかった
  • Panitumumab (P-mab:アービタックス)は現時点ではKRASの野生型(約60%)に適応があるが,すべてのRASの野生型(50%弱)に絞るべきかもしれない
  • 現在,検査キットの開発が進んでおり今後はall RAS検査を行う可能性あり

RASに何らかの変異があれば,EGFR阻害がむしろ悪影響を及ぼすというのは,少し恐ろしい結果でした.現時点では,EGFR阻害薬を処方している患者さんのうちの10%に害を及ぼしていることになるのです.

抗EGFR薬を1st lineで選択する患者
  1. 肝転移・肺転移が切除不能であるが,縮小によって切除可能になる可能性がある
  2. 腫瘍による症状がある
  3. 急速な増大や腫瘍の総重量が大きい