消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

130915 B型肝炎の治療

B型肝炎の治療の到達目標は,以前はHBe抗原が陰転化してHBe抗体が陽転化する「HBe抗原セロコンバージョン」であった.

セロコンバージョンを起こすと肝炎が沈静化し,HBV-DNA量が感度以下に低下することが多かった.

ところがセロコンバージョンにかかわらず,HBV-DNA量が多ければ肝発がんリスクが高いことが明らかになり,治療目標が「セロコンバージョン」のみではなく,ウイルスの増殖抑制(HBV-DNAの陰性化)、ALT値の持続正常を達成することになっている。

さらに2013年のB型肝炎治療ガイドラインでは,長期目標をHBs抗原の消失とする.消失すると発がん率が極めて低くなる.

 

要するにこれまでの治療目標の流れは

 HBe抗原の陰転化(セロコンバージョン)

→HBV-DNAの陰性化

→HBs抗原の消失

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ということになる.

 

現在の抗ウィルス治療には,核酸アナログのエンテカビル(バラクルード)かPEG-インターフェロンが使われている.

エンテカビルは薬剤耐性が少なく,殆どの症例でHBV-DNAが陰性化する,経口投与可能などから多くの患者に用いられている.一方でHBs抗原の陰転化率は10年で約10%と低い.

PEG-インターフェロンではHBe抗原の陰性化やDNA量の陰性化がみられるのは20〜40%にとどまるが,それらの症例ではHBs抗原陰転化率が高く,3年で30〜44%となる.

 

 

日経メディカルオンラインより