消化器外科専門医のブログ

消化器外科を専門にする中堅医師です.消化器(食道,胃,大腸,肝臟,胆嚢・胆管系,膵臓)のがんや手術を要する急性疾患,緩和医療などの診療を行っています.特に肝臓外科が専門分野です.日々の学びや,自分の成長につながること,頭のなかで考えたことを中心に記しています.

130928 過剰な鉄分は肝臓に悪影響を及ぼす

過剰な鉄分は肝臓に悪影響を及ぼす

 

鉄の過剰状態では,

酸素→スーパーオキシド→OH-ハイドロキシルラジカル 

の反応が起こりやすくなり,その結果として

細胞膜やタンパク質,DNAの損傷あるいはアポトーシスが促進されることがわかっています

 

これらは先天性の鉄過剰症であるヘモクロマトーシスでよく知られています

 

生体では鉄代謝を厳密に行っており,鉄は

  • 肝臓に貯蔵
  • 骨髄で赤血球(ヘモグロビン)産生

に使われます

 

この鉄代謝はC型肝炎NASH(非アルコール性脂肪性肝障害)などで障害され,

肝臓に貯まりやすくなることが明らかになってきています.

 このようにして過剰に貯留した鉄が,DNA損傷などを介して,肝細胞癌の発生を増加させると言われています.

 

 そこでC型肝炎の患者さんに対して,慢性の細胞ダメージを防ぐ目的で

瀉血と鉄制限

が行われることがあります.

 

とくにインターフェロン治療が無効な患者さん(C型肝炎の約1/3)には,積極的に勧めている施設もあります.

 

具体的には1〜2ヶ月ごとに400mlの血液を抜きます

そうすると肝臓の貯蔵鉄が,骨髄での利用に回されます

また同時に,鉄分摂取量を1日あたり6mgに制限します

目安としてはヘモグロビンの値を11程度に保ちます

 

C型肝炎の患者さんに対して瀉血療法を行うことで,肝細胞癌の発生を低下させるという報告があり,2006年より保険適応になっております.

現時点ではあまり広く行われていませんが,今後選択肢のひとつとになるかもしれません.